京都祇園軽ワゴン車暴走事件で5,200万円の支払命令(京都地裁)(2014年2月16日メルマガと同内容)
2012年4月に京都祇園で起きた軽ワゴン車暴走事件(19人死傷)は、記憶に新しいところです。
運転していた男性(以下「A」とします)は、平成15年にバイクで単独事故を起こし脳挫傷を受傷しました。後遺症としててんかんの発作が出るようになりましたが、病状を申告せずに運転免許を更新していました。
Aはその後2度意識を消失する発作を起こしており、家族や医師は運転をやめるように忠告していました。
当日Aは、社有車である軽ワゴン車を運転していました。祇園四条駅の近くに差しかかったときに、前を走っていたタクシーに右後方から衝突しました。Aは、タクシー運転手の制止を無視してそのまま走り去り、速度を上げて信号待ちの車列を右側から追い越して赤信号になった四条通の交差点に突入しました。
Aの車は、桜満開のため観光客が多くいた当該交差点で、多くの人が青信号で横断歩道を渡っているところに突っ込んだ形となりました。
全くブレーキをかけずに走り抜けたAの車は、交差点の南側で10人、北側で4人を死傷させました。
その後も猛スピードで走り続けたAの車は、通行人に接触しつつ、弁財天町の電柱に激突してようやく止まりました(この際も通行人死亡)。
事故原因としては、最終的に、最初のタクシーとの衝突によって精神的に動揺し、大和大路通を逃走中にてんかん発作が起き、暴走に至ったと判断されました。
○ この事件などを契機として道路交通法が改正され、運転に支障のある者が免許取得・更新時に虚偽申告を行った場合に罰則が設けられました。
○ Aの刑事責任については、容疑者死亡により不起訴となっています。
○ Aの勤務先である藍染め製品販売会社(以下、「B社」とします)の刑事責任については、Aの持病を知りながら運転させたとして業務上過失致死傷容疑で書類送検されましたが、嫌疑不十分(つまり、B社はAの持病を認識していなかった)で不起訴となっています。
今回は、民事責任について争われた裁判です。遺族が、Aの両親とB社に対して慰謝料など約6,100万円の損害賠償を求めていました。2月4日、京都地裁は、両者の損害賠償を認め、合わせて5,200万円(逸失利益約2,100万円、慰謝料2,700万円など)の支払を命じました。
Aの遺族のみならず会社にも損害賠償が命じられた理由は、勤務中の事故であったため、使用者責任などが認められたからです。
以下は一般論です。
社員が業務中に社有車で人身事故を起こした場合、運転していた社員はもとより、ほとんどの場合会社も自動車損害賠償保障法の運行供用者責任や民法の使用者責任が問われます。会社が過失がないことを立証するのは非常に難しく、ほとんどの場合この責任を免れることはできません。
そこで、事故を未然に防ぐための予防措置が重要になります。
○ 社有車管理規定の整備
○ 安全運転教育の徹底
○ 社員の持病等の確認(病状によっては運転中止を命ずる)
方法論等の詳細(特に社有車管理規定の整備)については、専門の社会保険労務士にお問い合わせください。