【2013/3/7】
安倍政権が発足させた有識者会議で、「労働市場の流動」が議論されています。その中で、「解雇規制の緩和」がテーマに上がったとのこと。大変興味深いので取り上げましょう。
「解雇規制の緩和」とは、「現行の法体系を見直して、もっと社員を解雇しやすくしましょう」ということです。
現行の労働法は、「かわいそうな労働者を守る」ためにありますので、解雇についても会社側に厳しい規制をかけています。すなわち、
「合理的な理由がなければ解雇は不可」
合理的理由の内容はケースバイケースで判断されるものですが、おおむね次のようなものが該当します。
○ 病気、ケガ等で業務を続けられない。
○ 業務遂行能力が著しく劣る。
○ 出勤不良で数回の注意にも改めない。
○ 無断欠勤が2週間以上
○ 傷害事件、業務上横領などの犯罪を働いた
裏がえして言えば、これらのいずれかに該当しない限り、解雇はできないということです。
ある社員が、社長にいくら反抗的であろうとも、業務遂行能力が他の社員より「多少」劣ろうとも、残業代欲しさに仕事をのらりくらりやったとしても、その社員がずる賢くて、これの「合理的理由」にはかろうじて該当しないようにうまく立ち振る舞えば、会社はその社員を解雇することはできないのです。
※誤解があるといけないので付け加えておきますが、「解雇はできない」という表現は適当ではありません。就業規則に解雇事由を記しておけば、解雇そのものは自由に行うことができます。ただし、本人が訴えて裁判になった場合は、合理的理由に基づいて判決がくだされる、ということです。
労働法の趣旨は「かわいそうな労働者を守る」です。かつての強欲な使用者が弱い労働者を酷使していた時代ならばそれで良かったのですが、時代の変化を忘れてはなりません。現代は、インターネットにより労働者がすぐに理論武装ができる時代です。弁護士に相談する、裁判に訴えるといった行為に及ぶことも、昔ほど抵抗がなくなってきました。
今は「かわいそう」なのは労働者ではなく、使用者の方である(という場合がある)と言ってしまっても、過言ではないと思います。
そんな流れの中で「解雇規制緩和」との議論が出て来たということです。会社側の利益を守るという観点からは一定の合理性がありますが、もしもこれが実現した場合、今以上に「解雇が横行する」という事態も想定されます。
一度変えた法は簡単には変えられまえんから、政府には慎重な対応を望みます。