一昨日の投稿で「続きは明日書く」と宣言しましたが、一日遅れになってしまってすみませんでした(だって昨日、気がついたら祝日だったんだもん)。
一昨日は、「法律は労働者に人として最低限の生活を保障する」という話をしました(こちら)。そのために、労働基準法などの法律が、「最低限の労働条件」をいろいろ定めていると。
それを受けて今日は、「では最低限とはどういうことか」をお話します。
結論から先に言うと、人によって感じ方は違うとは思いますが、一般的に言って最低限とは、決して満足できるレベルではありません。
具体例でお話した方がわかりやすいでしょう。
たとえば、休憩時間。労働基準法は、使用者(会社)に対して、労働時間の長さに応じて一定時間の休憩を与えることを義務づけています。
労働時間の長さ | 休憩時間 |
6時間以内 | 与える義務なし |
6時間超8時間以内 | 45分 |
8時間超 | 1時間 |
一定の休憩時間が確保されているように見えるかもしれませんが、もう一度表をじっくり見てください。次のような事実が浮かび上がって来ますね。
〇 労働時間が6時間以内なら休憩はゼロで構わない。
〇 労働時間が8時間なら休憩時間は45分で良い(1時間でなくて良い)。
〇 労働時間が8時間を超える場合(たとえば15時間であったとしても)は、休憩時間は1時間で良い。
おっと、実は低水準だということが、お分かりいただけるものと思います。
他にもいくつか挙げてみましょう。
<代休>
突発的に休日労働を命じられたときなどは賃金が割増で支給されますが(休日割増)、加えて代休を取れるのが一般的であると思います。
でも実は、労働基準法の考え方としては「代休は必ずしも与えなくて良い」です。なぜなら割増賃金を支払った時点で話が完結しているからです。
<休日>
労働基準法が使用者に義務づける休日は、「原則として1週間に1回、例外として4週に4日」です。したがって、完全週休2日制である必要はないし、国民の祝日も休ませなくて良いです。
<平均賃金>
休業手当(会社都合で労働者を休ませた場合に支払うもの)、解雇予告手当、休業補償(業務災害に遭って休業する労働者に対する補償金)などの金額の基礎となるものが平均賃金です。
休業手当を例に取りましょう。会社の都合で労働者を休ませた場合は、休業手当として1日当たり平均賃金の6割を支払わなければなりません。
と聞くと、「あ、お給料の6割がもらえるのね」と思いますよね。ところがどっこいそこにはカラクリがあって、実際はもっと少ないことがほとんどです。
秘密は、平均賃金の算出方法にあります。過去3箇月間の賃金額の平均値を取るのですが、計算式は次の通りです(労働日数が少ない人に適用される最低保障などの例外もありますが省きます)。
過去3箇月間の賃金総額÷その期間の暦日数
分母が「労働日数」ではなく「暦日数」であることがポイントですね。月給20万円の人で両者を比較してみましょう(端数は細かいので無視します)。
〇「労働日数(22日/月とする)」で計算
60万円÷ 66日=1万円
〇「暦日数(91日/3箇月)とする)」で計算
60万円÷91日≒6,593円
お分かりいただけたでしょう。休業手当の額は「平均賃金の6割」ですから、6,593円のさらに6割しかもらえないこととなります。
以上でわかるように、「法が労働者に保障するのはあくまでも最低限の労働条件」に過ぎません。過度に期待するのではなく、自らの生活は自らの手で作るとの覚悟が求められます。
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