出向先企業へ出向させた社員を出向元企業へ呼び戻す際、本人の同意が必要でしょうか?
以前の記事で、「出向命令には原則として本人の同意が必要」である旨ご説明しましたが、いったん出向先へ出向させた社員を出向元へ呼び戻す際の同意の要否については、別の法律問題として扱う必要があります。
出向には移籍出向と在籍出向の種類がありますが、移籍出向は社員としての身分が完全に出向先へ移るので呼び戻すという行為自体が起こり得ませんから、この問題は在籍出向の場合に限られることとなります。
意識すべき重要ファクターは次の点です。
「その社員は、もともと出向元で働くことが予定・前提とされていた」
当初の労働契約は出向元の企業と結んだのですから、出向元企業で働くことが予定されていた・前提であったこととなるので、出向先での勤務自体がイレギュラーであった、という考え方です。この考え方には一定の合理性があるものと考えられます。
その上で、呼び戻しに同意が必要か否かについては、次の2形態に分けて考える必要があります。
① いずれ出向元に戻ることが予定されていた場合
② 出向元に戻ることが予定されていない場合
①の場合
いわゆる「元の鞘に戻った」だけですから、特に本人の同意は不要でしょう。
②の場合
本人の同意を得るべきでしょう。
つまりは、出向の際の契約内容が呼び戻しの際の本人の同意の要否に大きく影響するということです。
就業規則の根拠がきちんとしていないと、いざというときに揉めることとなります。早急に整備を!
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