「営業職、完全歩合制」との求人をよく見かけます。いわゆるフルコミッション制ですね。
これが合法かどうかについて考えてみましょう。
いや、社会で広く行われているからといって、イコール合法とは限りませんよ(他の例で言うと、「課長になったら残業代なし」というルール。採用している企業は多いですが、あれも法律違反です。残業代を支払わなくて良いのは労働基準法の管理監督者です。管理監督者とは「経営者と一体とみなされる労働者」であって、一般の課長は含みません)。
結論から言うと、「成果が上がらなければ給料ゼロ」という形のフルコミッションは、違法です。労働基準法第27条に次の規定があります。
労働基準法第27条
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。 |
この条文が言いたいことは次の通りです。
「上げた成果に対して報酬を支払うのはもちろん良いけれども、それとは別に労働時間に応じた賃金も支払いなさい」
たとえば、1日8時間働いた場合、成果に対する報酬とは別に、8時間分の賃金を支払う必要があるということです。これはとりもなおさず、「フルコミッション制」が違法であることを示していますね。
根底にあるのが労働者保護であることはお分かりいただけると思います。一所懸命やったのに仮に成果がゼロであった場合に賃金もゼロでは、生活ができないよね、ということです。
では、労働時間に応じた賃金をいくら支払えば良いかですが、そこについては明確な基準がありません(条文も「一定額」としているのみです)。
一般的には、生活費である休業手当の基準である「6割」が妥当ではないか、とされています(こちらは「一定(率)」ですが、あくまでも考え方なので、条文と矛盾はしません)。
以上が、フルコミッション制についての法の考え方ですが、これはあくまでも従業員が「労働者」である場合(つまり、「雇用契約」)の話であって、「請負制」の場合はまったく話が異なってきます。
請負制は「企業と個人事業主との契約」ということですから、そもそも労働基準法は適用されませんので、フルコミッション制であっても認容されることとなります。
ただし、請負制の場合は、労働者ではないのですから、会社は指揮命令や労働時間の拘束などを行うことができず、そのような実態が見られる場合は、契約のいかんに関わらず労働者とみなされることになります。
実態は雇用契約であるにも関わらず請負契約を結び、労働時間に応じた賃金の支払いを免れようとする悪質な企業もあるので、注意が必要です。