昨日「労働者」についてお話したので、今日は、同じく労働基準法上の用語である「使用者」の解説をします。
一般的に、「使用者」=「会社」と考えられていますが、事はそう簡単ではないのです。
使用者の定義は、労働基準法第10条にあります。
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。 |
まず知っていただきたいことは、「使用者」とは、「労働基準法が定めたさまざまな責任を負う存在である」ということです。
労働基準法は労働者保護のために、使用者に対して多くの義務を定めています。使用者は労働基準法の諸規定を遵守しなければならず、違反すると懲役や罰金などの罰則が課されることになります。
それほどに重い責任を負っているのが使用者なので、何らかの形で会社などに関わっている人は、ご自分が使用者に該当しないかどうかを、きちんと知っておく必要がある理屈です。
労働基準法第10条によれば、「使用者」には3つの種類があることがわかります。
①事業主
②事業の経営担当者
③事業主のために行為をするすべての者
おのおの解説しましょう。
①事業主
その事業の経営主体のことです。会社の場合は会社そのもの、個人事業の場合は事業主さん個人です。
会社の場合、社長ではないのがポイントです。会社のことを「法人」ということからわかるように、会社を人間とみなして会社そのものに責任を負わせる考え方です。
②事業の経営担当者
取締役や理事などです。
③事業主のために行為をするすべての者
なんだか難しい言い回しですが、要するに、「会社の命を受けて労働者を管理する人」ということです。法律では「人事部長や労務課長が該当する」とされていますが、実務的には営業部などの部課長も該当すると考えた方が良いでしょう。
たとえば、課長のあなた。あなたは「自分は会社に使われている労働者だ」とお考えだと思います。いや、それは正解です。あなたはあなたのご認識の通り紛れもなく労働者であり、労働基準法によって徹底的に保護されます。
でも、あなたが一人課長ではなく部下がいるとすれば、あなたは使用者にも該当するのです。同じ人が、労働者と使用者の両方に該当するという不思議な現象が、職場ではフツーに起きます。
あなたも使用者である以上は、労働基準法を遵守しなければなりませんし、違反した場合は、罰則が課されることがあります。罰金だって取られますし、悪質な場合は懲役刑だってありえます。
管理職でない一般社員は、完全に労働者です。そういう人たちは、労働基準法によって守られる人ですから、労働基準法の知識がなくても、大きな不利益はありません(自分の権利を知らないで損をすることはありますけど)。
一方で、管理職のあなたは、労働基準法を知らないと、いつの間にか法律違反を犯してしまって、罰則適用なんてことも、十分にありうるのです(「知らなかった」では許されませんよ)。
管理職たるもの、ある程度は法律の勉強もしましょうね。もちろん、細かい知識はいりません。そのために、会社の法務部、社労士、弁護士などがいるのですから。本当に困ったときは、遠慮なくご相談ください。