労働基準法第15条、同施行規則第5条は、使用者の労働条件明示義務を定めています。
第15条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
明示方法は、絶対明示事項(昇給に関する事項は除く)は書面交付が必要です。相対的明示事項と昇給に関する事項は口頭でも構いません。
※パートタイマーの場合は、加えて「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」の書面交付も必要です。
さて、書面交付は、具体的にどのように行ったら良いでしょうか。いくつかの方法があります。
① 就業規則+辞令の交付
② 労働条件通知書の交付
③ 労働契約書を交わす。
① 就業規則+辞令の交付
就業規則に加え、就業規則に記述されていない労働条件(その従業員の賃金額等)を記した辞令を交付します。両者合わせて書面明示義務を果たす方法です。
② 労働条件通知書の交付
労働条件を記した文書を作成して交付します。会社も控を取っておくべきであることは言うまでもありません。書式は任意ですが、厚生労働省がモデル様式を公表していますので、利用すると良いでしょう。
労働条件通知書のモデル様式:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/meiji/dl/h241026-2-betten.pdf
③ 労働契約書を交わす
労働条件を記した「労働契約書」を作成します。会社と従業員が署名捺印したものを2部作成し、おのおのが1部ずつ保管します。
労働条件通知書との違いは次の通りです。
労働条件通知書 | 労働基準法第15条及び施行規則第5条の労働条件明示義務を果たすために交付する文書。契約書とは異なる。労働条件通知書の交付のみを行い労働契約書を交わさないとしても、労働契約の成立にはそもそも文書が不要であるので、法的に問題はない。 |
労働契約書 | 文字通り「労働に関する契約書」である。労働契約の成立に文書は不要だが、契約書を交わすことは当然に認められる。労働契約書内に書面交付が必要な労働条件をすべて記せば、労働条件通知書を兼ねることとなる。 |
①②③に優劣はなく、いずれを選択してもかまいません。一般的には、正社員については③、パートタイマーについては②とする企業が多いようです(大企業は①も多い)。
また、書面交付に替えて、本人が希望する場合はファックスや電子メールでの交付も可とされています。