【2012/11/16】
個別的労働関係法の趣旨について解説します(前回の続きなので、前回の「労働法の別分類」を先にお読みください)。
次の図を見てください。

〔前提〕
A社とBさんの間には、企業と消費者という以外の関係は一切ありません。
〔質問〕
BさんがA社の社員になるためにはどうしたら良いでしょうか。
さて、どうでしょうか?
もちろんいろいろな方法が考えられますね。以下、一つの例をご提示しましょう。
Bさんが、A社に電話をします。電話口に出たのは、人事担当のCさんです。
Bさん、Cさんに告げます。「私、御社で働きたいのですが」
Cさん「では、明日履歴書を持って来社してください。
翌日、身だしなみを整えたBさんは履歴書を持ってA社を訪れます。応接室に通され、Cさんによる面接を受けます。
CさんはBさんを気に入りました。社長とも相談してBさんを雇用することにしたので、CさんはBさんにこう告げます。
「当社はあなたを採用します。ついては、明日から出社してください」
Bさん「ありがとうございます。では、明日からがんばって働きます」
この結果、翌日からBさんはA社の社員として働くことができるようになります。
なんとも当たり前の話ですが、これを法律的な側面から見ると、一風変わった風景が醸し出されます。
今の状況を法律的に言うと、「A社とBさんとの間に労働契約が結ばれた」となります。
労働契約の内容は以下です。
◎翌日以降、会社はBさんに対して指揮命令を行う。Bさんは指揮命令を受けて業務を遂行する。会社はBさんに対して対価としての給料を支払う。
「文書が結ばれていないのに契約成立?」と不思議に思うかも知れませんが、労働契約に限らず契約というもの(金銭契約、不動産契約)はすべからく、口頭で有効に成立します。後々のトラブルを防ぐために文書を交わすことが多いですが、文書を交わすことは契約の成立要件ではありません。
ここで2つ目の質問です。
契約というものの「あるべき姿」は何でしょうか。契約の理想形ですね。契約とは「どうあるべき」でしょうか。
それはもちろん「対等」ですね。契約は、両当事者が対等な立場で結ぶべきであり、一方が強い場合は、それは奴隷的拘束であって契約ではありません。
さて、労働契約は対等と言えるでしょうか?
(次回に続く)