がんばってる人に「がんばれ!」は禁句(2019年11月27日)
社長や管理職になったばかりの方は、部下との接し方が難しいですね。「どうしてこんなにうまくいかないんだろう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
部下との接し方には、いくつかのポイントがあります。今日は、その一つ、「がんばってる人にがんばれ!は禁句」について話します。
私が、とあるマラソン大会に出場したときのこと。35km過ぎに差し掛かり、私も私の周りのランナー達も疲労困憊状態です。心身共に限界を超えていますが、みんな「それでもがんばるんだー!」と必死になっています(もっと速い人たちはスイスイ行っちゃうんですけどね)。
沿道に地元のおばあちゃん、寒い中立ったままで「がんばれ〜!がんばれ〜!」と声援を送ってくれています。
次の瞬間、私の隣を走っていたおじさんが大声で叫んだのです。「がんばってるんだよー!うるさいなー!」
どう思います?
いや、「おじさん、なんだよー」ですよね。「ステキなおばあちゃんの気持ちを無にするなんて、なんてひどい奴だ!おばあちゃんがかわいそう!」
はい、それが普通の感覚であって、正しい判断だと思います。その点、私もまったく異論はありません。
ただ、ただですよ、そこでちょっとだけ立ち止まって、おじさんの気持ちになって考えてみて欲しいのです。
これまで35kmもがんばってきた。ずっとキツかった。そして今はキツさのピーク、やめたい、もうやめたい、いや、でも、一度志したからには、何が何でもゴールまで行きたい。くそ〜、この身体、なんとかなれ〜!
そんな極限の気持ち、そう、おじさんは、十分に、十二分に「がんばっている」最中だったのです。
そこに追い打ちをかけるように「がんばれ〜!」の言葉。「いや、もうこれ以上がんばれないじゃん!」と瞬間考えたおじさんの気持ちが、彼の口ではなく、脳天を突き抜けて先に書いた怒声となってしまったのです。
当然ですが、おじさんには悪気なんてありませんでした(きっとね)。本当は、おばあちゃんの応援を嬉しく思いたいし、冷静な気持ちのときであれば、笑顔で手を振ったことでしょう。
でも、たまたま折り悪く彼は極限状態下にいた。そのタイミングの悪さが生んだ悲劇だったのです。
この事件を、仕事の現場に当てはめてみましょう。
日本人は基本的に真面目な国民ですから、あなたの部下の中にもとても真面目な人が一定割合でいるはずです(他の人が不真面目という意味ではもちろんありません。真面目さの程度の問題です)。
真面目に真面目に本当に一所懸命仕事をする。それで成果も上がっていれば良いのですが、中になかなか成果に結びつかない人がいる。
そんな人に対して、「がんばれ!」の言葉はタブーです。だって、もう十分にがんばっているのですから。
別の言葉をかけましょう。
「おつかれさま」
「よくがんばって偉いね」
「あまり無理をしないようにね」
そして、ここが大切なのですが、「ではどうすれば良いか」という具体的な方法論を必ず話してあげてください。
その部下が一所懸命やっているのにうまくいかないのには、必ず理由があるはずです。先輩である社長や上司であるあなたは、その理由をご存じのはずだし、打開するためのノウハウもお持ちであるはず。それを、部下に教えてあげてください。
応援するだけでは、結果に結びつきません。より具体的に、部下がその持てる能力を最大限に発揮できるように導いてあげてください。