高年齢者雇用安定法改正1
【2013/8/19】
2013年4月に行われた高年齢者雇用安定法の改正について解説します。少々話が長くなりますので、本日は法の生い立ちや趣旨を。
◇高年齢者雇用安定法は、書いて字のごとく「高齢者の雇用を安定することを目的とする法律」として昭和46年に誕生しました。背景は、若年者と並んで高齢者の失業率が高い状況にあるためです。
●趣旨
失業率の高い高年齢者の安定した雇用の確保、再就職の促進、現行法では、60歳を下回る定年年齢を定めることを禁じていることから、「60歳定年法」とも呼ばれる。
●生い立ち
昭和46年 | 施行 |
平成7年 | 改正⇒定年年齢が60歳を下回ることが不可とされた。 |
平成16年 | 改正 ⇒65歳までの継続勤務の実現 企業は、以下の3つのいずれかを講じなければならない(雇用確保措置) ・定年の廃止 ・定年の引き上げ ・継続雇用制度の導入 |
平成25年4月 | 今回の改正 |
◇平成7年に改正が行われ、「企業が定年年齢を定める場合は60歳を下回ることができない(一部の例外を除く)」こととされました。
⇒企業は定年年齢を定める義務はありません。「うちの会社は定年なし」でも構わないのです。定める場合は「60歳を下回ることは不可」がこの規定です。65歳定年や70歳定年はもちろん構いませんが、一番若くても60歳定年でなければダメで、たとえば55歳定年は違法となるという意味です。
趣旨は、当然のごとく平均寿命の伸びですね。それまでは55歳定年が一般的でした。人生50年や55年の時代はそれで良かったのですが、平均寿命が著しく伸び老後が長くなった現代において、「55歳定年」は実態に合わないものとなっていたのです。
◇平成16年には、65歳までの雇用確保を目指す改正が行われました。
趣旨は、表向き(たてまえ)の趣旨とホンネの趣旨とがあります。
・表向き(たてまえ)の趣旨
平均寿命がますます伸び、60歳で引退することは現実的ではなくなった。国民の職業人生及びその後の真の人生の充実のために「65歳現役社会」の実現を目指す。
・ホンネの趣旨
老齢厚生年金の支給開始年齢の繰り下げ(60歳⇒65歳)を受け、60歳以降年金受給開始年齢までの空白期間(収入ゼロ期間)をなくすため。
ホンネの趣旨がバレバレであるにも関わらず、それを口にすることは立場上できず、あくまでもたてまえ論に終始しなければならない政府も大変です。老齢厚生年金との関係については、また後日詳しく触れますね。
「65歳までの雇用確保」とは言っても、それまでの60歳定年をいきなり65歳定年へ延ばすわけにもいきません(世の中が大混乱してしまいます)。そこで、実質的な「65歳現役社会」の実現へ向けてのクッションを置きました。経過措置の一種ととらえていただければ良いでしょう。それが「雇用確保措置」です。
企業は、規模に関わらず、以下の3つのうちいずれかを必ず実施しなければなりません。
・定年の廃止
・定年年齢延長
・継続雇用制度の導入
予想通り長くなりましたので、続きは次回とさせていただきます。