【2013/1/21】

労働基準法 第1章 総則についてお話ししています。今日は、第2条です。

1 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

○ 1項

「すべきものである」との文言からわかるように、「べき論」です。労働者と使用者が現実には対等でないがゆえに、理想論としてあえて設けられた規定です。
 

○ 2項

 労働協約、就業規則、労働契約各々の解説をしましょう。このブログで前にも一度解説しましたが、大切なことなので再度記述します。

●労働協約

使用者(会社)と労働組合との書面協定です。一方の当事者は労働組合に限ります。

●就業規則

使用者は、法に触れない限りにおいて、労働条件を自由に決定できます。決定したもろもろの労働条件を記した文書が就業規則です。常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成・労働基準監督署への届出義務を負います。

●労働協約

使用者と労働者との労働条件に関する契約です。文書は不要で、口頭で有効に成立します。実際、正社員を雇うときに契約書を交わしている会社は少ないのではないでしょうか。
 

それぞれの「法的強弱」については、以下の記事をご覧ください。

https://www.tokyo-consul.jp/article/14570811.html
 

2項は、労働者、使用者双方共に、労働協約、就業規則、労働契約を遵守し、加えて義務の履行を求めています。

労働協約、労働契約はともかくとして、会社が勝手に作成した就業規則を労働者が「遵守」しなければならない、というのは少しおかしな気がしますね。労働者だって不満に思うこともあるはずです。
 

その考え方は正しく、この条文は単なる「訓示規定」と解釈されています。1項と同じく「べき論」ということですね。したがって、1項、2項共に(1条と同じく)罰則は設けられていません。
 

労働協約、就業規則、労働契約の内容について紛争が生じた場合は、裁判などの手段によって解決することとなります。

【2013/1/6】

労働基準法についてお話ししています。今日からしばらくは、第1章:総則です。

総則には、第1条から第12条までの条文があります。

第1条:労働条件の原則

第2条:労働条件の決定

第3条:均等待遇

第4条:男女同一賃金の原則

第5条:強制労働の禁止

第6条:中間搾取の排除

第7条:公民権行使の保障

第8条:削除(かつては”適用事業”が規定されていました)

第9、10、11、12条:定義

第1条 労働条件の原則

1 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当時者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

○ 1項

憲法25条の生存権を確保するための条文です。

<憲法25条1項>

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

労働者に「健康で文化的な少なくとも最低限度の生活を営む権利」を保障するために、労働基準法は、「もろもろの労働条件の最低基準」を定めました。

○ 2項

労働基準法が定めるもろもろの労働条件は「最低限度のものである」ことを確認しています。最低限度のものである以上、使用者がこれらの基準を下回る基準で労働者を働かせることは認められません(法律違反となりますから、当然のことです)。

逆に、法が定める基準を上回る基準を適用することは労働者保護の観点から考えて望ましい、と謳っています。

例を挙げましょう。たとえば労働時間。労働基準法は、最低限度の基準として、「使用者が労働者を労働させることができる時間の上限」を次のように定めました。

8時間/日、40時間/週(法定労働時間)

以下、1日辺りの限度時間である8時間で論じます。

8時間が限度時間ですから、8時間まで働かせることは構いません。A社は、就業規則で自社の労働時間を「1日8時間」と定めましたが、これは合法となります。

B社は、「1日9時間」と定めました。これは法律違反ですから、当然に無効です。

C社は、「1日7時間」と定めました。これは、法を上回る取扱いであり労働者にとって有利なので、認められます。

D社は、「1日7時間」と定めていましたが、労働基準法が「1日8時間」までの労働を認めるいることを知り、就業規則を「1日8時間」としてしまいました。これは、1条2項違反となります。また、就業規則の不利益変更として、労働契約法9条にも反します。

ただし、労働基準法1条にも労働契約法9条にも罰則はありません。

【2012/12/25】

今日からしばらくは、「労働基準法」に的を絞ってお話していきましょう。
 

労働基準法は、昭和22年に誕生した、個別的労働関係法の核を成す法律です。その趣旨は以下。

「労働者が、少なくとも人として最低限度の生活を営めるように、もろもろの労働条件の最低限度を定めた」

憲法の生存権を具体化した法律と認識するとわかりやすいでしょう。

使用者(会社)によって酷使されがちな労働者を保護するのが目的ですから、「労働者保護法」ということです。

労働基準法の条文は、全13章の章立てになっています。

 

第1章 総則

第2章 労働契約

第3章 賃金

第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇

第5章 安全及び衛生

第6章 年少者

第7章 技能者の養成

第8章 災害補償

第9章 就業規則

第10章 寄宿舎

第11章 監督機関

第12章 雑則

第13章 罰則
 

以下、特に重要な章について、その概要を記します。

第1章 総則

どの法律にも設けられている章です。法律の導入部分ですね。目的規定(その法律の理念。法1条や2条に記されている)や法律用語の定義などが規定されています。
 

第2章 労働契約

前回までに説明したように、労働契約とは使用者と労働者間の労働に関する契約です。

「まず労働契約ありき」であることを認識してください。労働契約が締結されて初めて会社は「使用者」、個人は「労働者」となり、以下の通り労働基準法と関わることとなります。

使用者=労働基準法によってその行動を規制される

労働者=労働基準法によって保護される。

それもこれもすべて「労働契約が締結されて以降」の話ですから、「まず労働契約ありき」であるわけです。

労働契約はそれほどに大切なので、労働基準法では、総則の次に位置づけています。
 

第3章 賃金

賃金がもらえなければ生活できませんので、賃金は、数ある労働条件に中でも、もっとも重要と言えます。したがって、このように独立した章を設けて、徹底的な労働者保護を図っています。
 

第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇

それ以外の労働条件について記した章です。労働基準法の中でもっともボリュームが大きくもっとも複雑な章です。
 

第6章、6章の2

女性と子どもは、一般の男性と比べて特に使用者によって酷使されてきたという歴史がありますので、この章を設けることで、特別の保護規定を置きました。
 

第9章 就業規則

前回までで詳しく解説しましたね。

 

次回は、第1章 総則の中身を見てみます。

【2012/12/10】

前回までは、個別的労働関係法の趣旨についてお話してきました。今回は、集団的労働関係法についてご説明します。
 

個別的労働関係法の整備によって、労働者は「人として少なくとも最低限の生活」を保障されます。

それはとても喜ばしいことなのですが、でも、よく考えると、あくまでも「最低限」に過ぎません。「最低限」では、人間は不満ですよね。

たとえば、労働時間。個別的労働関係法の核となる労働基準法の規定により、労働者を1日当たり8時間を超えて働かせることはできません。これにより長時間労働から解放されますが、でも、労働者は、よりよい労働条件、すなわち、1日7時間、6時間・・・、を望みます。

そこにはもう法律の保護はありませんから、利害の対立する使用者と戦っていかなければなりませんが、使用者は組織、労働者は一介の個人ですから、まともにぶつかったのでは、跳ね返されすりつぶされてしまうのが落ちです。

労働者が使用者と対等な立場で戦うためには、労働者も組織を作る必要があります。

その組織が労働組合です。

というわけで、集団的労働関係法(労働組合法、労働関係調整法)では、「労働者が労働組合を結成する権利」「正当な労働組合活動を行う権利」を保障します。

【2012/11/16】

それでは労働者がかわいそうです。

そこで、かわいそうな労働者を守るために、個別的労働関係法が生まれたのです。

個別的労働関係法は、使用者によって酷使されがちな労働者が、人として少なくとも最低限度の生活を営めるように、もろもろの最低限度の労働条件を定めました。個別的労働関係法が定める労働条件の基準を下回る(労働者にとって不利な)基準で労働者を働かせると、使用者は罪に問われます。
 

個別的労働関係法の核となる労働基準法を例に取りましょう。

たとえば労働時間。使用者としては労働者をできるだけ長い時間働かせたいですから、放置しておくと、極端な話「1日24時間労働」などということになってしまいます。

そこで、労働基準法では、「使用者が労働者を労働させることができる時間の長さの上限」を定めました。これを「法定労働時間」といい、原則として「1日8時間、1週当たり40時間」です。

1日当たりで言うと、使用者は労働者を8時間働かせることは構いませんが、その時間を1分で超えて働かせると、それは労働基準法違反ということになります(例外はあります。いわゆる「残業」はその際たるものです。ここでは原則論のみで語っていることを了解してください)。

労働基準法にはちゃんと罰則もあり、罰金が取られますし、場合によっては懲役刑もあります。社長も刑務所に入るのは嫌ですから、「仕方ない。じゃあ1日の労働時間は8時間ということにするか」ということになり、これによって、労働者の「人として少なくとも最低限度の生活」が守られるのです。

以上が個別的労働関係法の趣旨です。かわいそうな労働者を守る「労働者保護法」であると理解してください。
 

※最近のモンスター従業員の大量発生・増殖という状況を見ると、とても「かわいそうな労働者」とは言えませんが、その話はまた後日です。今日は、法の趣旨ということで捉えてください。
 

一つ付言しておきます。

個別労働関係法が定めたものは「最低限度の労働条件」であり、その基準を下回ると使用者が罰せられますが、逆はどうでしょうか。すなわち、法律の規定よりも労働者にとって有利な条件で労働者を働かせること。労働時間で言えば、「うちの会社は1日8時間なんてケチなことは言わねぇ!7時間でいいぜ」とか、「いや、うちは6時間でいいぜ」といったことです。

法の趣旨に照らして、これはもちろん認められます。労働者にとって有利に取り扱うことは一向にかまいません、と言うよりむしろ、法はそれを奨励しています。

【2012/11/16】

さて、労働契約は対等と言えるでしょうか。

その前に、ここで3つほど法律用語を覚えていたただきます。法律用語というと抵抗を覚える方もいらっしゃるかも知れませんが、このブログを読み進めていただくために必要なことなのです。どうそご容赦ください。

なに、そんなに難しいものではありませんのでご安心を。

3つの用語とは、使用者、労働者、賃金です。

○ 使用者

「使う側」という意味で、会社そのもの(個人企業なら事業主さん)、役員、現場の管理職などを指します。

○ 労働者

「使われる人」という意味です。正社員、パート・アルバイト、期間雇用者、日雇労働者などの就業形態を問いません。

○ 賃金

「労働の対償として使用者から受けるもの」です。要するにお給料のことですが、法律上「給料」という用語はありません。

まとめて言えば、会社そのものや役員、それに現場の管理職が使用者、使用者によって使われている人は就業形態を問わず労働者、使用者の指揮命令を受けて労働した労働者に対して使用者が支払うものが賃金、ということになります。

 

話を戻します。労働契約は対等と言えるでしょうか。

例を挙げて考えましょう。

BさんがCさんに告げます。「ところで、お給料のことなんですけど、子どもの学費がかかるし住宅ローンもあるので、そうですね、月20万円ぐらいは欲しいのですが」

Cさん(あくまでも例ですよ)「え?20万?そりゃまた随分大金だね。あなたは、それに見合うだけの何か特別な技能を持ってるの?うちの会社の工場で使ってる特殊な機械の操作方法に習熟してるとか、前の会社で営業成績がトップだったとか」

Bさん「あ、いえ、私にはそんな特殊技能はありません」

Cさん「あ、そう、う〜ん、それじゃあ、申し訳ないけど、うちの会社はあなたに月20万円は払えないねぇ。そうだな、15万円でどお?あ、いや、嫌ならいいんだよ、だって、15万円で来てくれるDさんとかEさんだっているんだからね」

Bさんの選択肢は2つです。

一つ:「てやんでぇ!」と叫んで机をひっくり返し、「こんな会社こっちから願い下げだ!」と啖呵を切る。

⇒とっても格好いいですが、賢い選択とは言えませんね。なぜなら、今の時代、何の技能もないBさんを雇ってくれる会社は他にないかもしれないからです。

となると、Bさんの選択肢はもうあと一つしか残っていません。はい、それは、月15万円で我慢して、A社に入社することです。

これでお分かりですね。そう、対等であるはずの労働契約は実は対等ではなかったのです!使用者の方が、社会的にも経済的にも強いので、「使用者の意のままの労働契約が結ばれてしまいがち」なのです。

 

それでは、労働者がかわいそうです。

(次回に続く)

【2012/11/16】

個別的労働関係法の趣旨について解説します(前回の続きなので、前回の「労働法の別分類」を先にお読みください)。

次の図を見てください。

roudokeiyaku.jpeg

〔前提〕

A社とBさんの間には、企業と消費者という以外の関係は一切ありません。

〔質問〕

BさんがA社の社員になるためにはどうしたら良いでしょうか。

 

さて、どうでしょうか?

もちろんいろいろな方法が考えられますね。以下、一つの例をご提示しましょう。

Bさんが、A社に電話をします。電話口に出たのは、人事担当のCさんです。

Bさん、Cさんに告げます。「私、御社で働きたいのですが」

Cさん「では、明日履歴書を持って来社してください。

翌日、身だしなみを整えたBさんは履歴書を持ってA社を訪れます。応接室に通され、Cさんによる面接を受けます。

CさんはBさんを気に入りました。社長とも相談してBさんを雇用することにしたので、CさんはBさんにこう告げます。

「当社はあなたを採用します。ついては、明日から出社してください」

Bさん「ありがとうございます。では、明日からがんばって働きます」

この結果、翌日からBさんはA社の社員として働くことができるようになります。

 

なんとも当たり前の話ですが、これを法律的な側面から見ると、一風変わった風景が醸し出されます。

今の状況を法律的に言うと、「A社とBさんとの間に労働契約が結ばれた」となります。

労働契約の内容は以下です。

◎翌日以降、会社はBさんに対して指揮命令を行う。Bさんは指揮命令を受けて業務を遂行する。会社はBさんに対して対価としての給料を支払う。

「文書が結ばれていないのに契約成立?」と不思議に思うかも知れませんが、労働契約に限らず契約というもの(金銭契約、不動産契約)はすべからく、口頭で有効に成立します。後々のトラブルを防ぐために文書を交わすことが多いですが、文書を交わすことは契約の成立要件ではありません。

 

ここで2つ目の質問です。

契約というものの「あるべき姿」は何でしょうか。契約の理想形ですね。契約とは「どうあるべき」でしょうか。

それはもちろん「対等」ですね。契約は、両当事者が対等な立場で結ぶべきであり、一方が強い場合は、それは奴隷的拘束であって契約ではありません。

さて、労働契約は対等と言えるでしょうか?

(次回に続く)

【2012/11/16】

前回は「労働法」のお話をしました。労働法は、法令、通達、裁判例といった要素を複合させた一連の法体系を指します。
 

今日も労働法の話です。労働法を違った角度から分類してみましょう。
 

労働法は、「個別的労働関係法」と「集団的労働関係法」に分けることができます。

○ 個別的労働関係法=企業と個々の労働者との関係を律する法律群

               ☆核となる法律:労働基準法

○ 集団的労働関係法=企業と労働組合との関係を律する法律群

               ☆核となる法律:労働組合法
 

集団的労働関係法に属する法律は、労働組合法、労働関係調整法等ごくわずかで、労働関係の法律のほとんどすべては、個別的労働関係法に属します。個別的労働関係法の趣旨を知ることが、労働法の理解につながるということですね。

<個別的労働関係法の趣旨>

⇒長くなるので、別記事(次回)にしますね。

【2012/11/08】

今日は、よく耳にする「労働法」についてです。経営者として避けて通ることのできない労働法について、正しい知識を得ましょう。
 

労働法という名称の法律は存在しません。労働法とは、以下の要素を複合した法体系を指します。

①労働関係の諸法令

②通達

③裁判例

④学説

学説は細かいので省き、①②③について解説します。

①労働関係の諸法令

労働関係のすべての法律です。核となるのが労働基準法ですが、他にもたくさんの法律があります。職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労災保険法、雇用保険法、健康保険法・・・etc.

②通達

厚生労働省が、下部組織である都道府県労働局や労働基準監督署に流す内部文書です。特定の事案について疑義が生じたときに、厚生労働省としての判断を全国に周知徹底させるために発布されます。法律そのものではないのですが、都道府県労働局や労働基準監督署では通達にのっとって実務を処理しますから、実務上とても大切なものです。

③裁判例

裁判所が下した特定に事例に対する判断です。判断を下す主体が異なるだけで、ある意味通達と似ていますね。すなわち、通達は厚生労働省、裁判例は裁判所。

裁判になった場合は、法律、通達のみならず、過去の裁判例も参考にした上で判決が出されます。

 

以上が労働法の姿です。

労働法の範囲は多岐にわたり、また大変複雑ですから、経営者のあなたとしてはそのすべてを把握・理解する必要はありません。概略のみで十分です。このブログで、共に勉強していきましょう。

【2012/10/29】

就業規則に記す労働条件の基準は、法律に反することや労働協約を下回ることはできません。逆に言えば、法律や労働協約に反しない範囲であれば、労働条件の水準は会社が勝手に決めて差し支えないことになります。

話をシンプルにするために、労働協約のない会社で考えてみましょう。

労働基準法が定めた労働時間の上限(法定労働時間)は、1日当たり8時間です(週当たりは省く)。

一方、その会社で決めた労働時間を所定労働時間といい、法定労働時間を上回ってはなりません。

<所定労働時間>

A社:9時間⇒違法

B社:8時間⇒合法

C社:7時間⇒合法

ここまでは復習ですから、問題ないですね。

 

今日のテーマは「不利益変更」です。

この例で、C社が、ある日突然就業規則の変更手続きを行って、所定労働時間を8時間に延長しました。

労働者にしてみれば、1日7時間の労働で良かったところが突然8時間とされたのですから、紛れもない「不利益変更」ですね。

さて、これは可能なのでしょうか。

 

順を追って考えます。

1.手続き的には?

就業規則の変更手続きは、作成時と同様、労働者の代表者の意見書を添付して所轄労働基準監督署長に届け出るだけです。意見書の内容が全面反対でも構いませんから、1日7時間⇒8時間への変更は、手続き的には問題なくできることになります。

2.法律違反ではないの?

労働基準法1条2項に、次の条項があります。

この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当時者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはなないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない

1日7時間⇒8時間はダメで、むしろ、6時間、5時間・・・とするように努力しなさいという意味ですね。

このように不利益変更は、明確な労働基準法違反です。

ただし、この条文には罰則規定がないのです。罰則規定がない以上、法律的には問題があっても、会社はその気になれば、簡単に不利益変更が行えることとなってしまいます。

3.判例による歯止めは?

法律がカバーし切れない範囲を受け持つのが裁判例です。最高裁の判例等の集積により、不利益変更に関する判断基準が確立しました。

「社会通念上合理的相当な理由なき不利益変更は無効とする」

わかりやすく言えば、「合理的な理由がなければ不利益変更は認めない」ということです。

この判断基準は、平成20年に施行された労働契約法中にも、盛り込まれました(労働契約法9、10条)。

ただし、労働契約法にも罰則はありませんので、会社が行った不利益変更に不服がある労働者は、最悪の場合、裁判で争う道を選択しなければならないこととなります。

 

 就業規則作成・変更の注意点はこちら

【2012/10/26】

「就業規則は税理士さんに作ってもらったよ」とおっしゃる社長さんが多いのですが、これはどうなのでしょうか?

 

結論から言えば、もちろんダメ!です。

 

税理士さんは税金のプロです。当たり前ですが、税金についてはスーパー知識をお持ちです。
 

でも、残念ながら、労働法についてはしろうと同然なのが現実です。
 

「え、じゃあ、なぜ税理士さん、就業規則の作成の仕事を受けるの?」
 

あなたの疑問ももっともです。理由は2つです。

①嫌と言えないから

プライドのなせるワザでしょう。「先生、就業規則をお願いします」と言われて、「いや、私は税理士だから就業規則は作れません」と言うのは、なかなか勇気のいることなのです。
 

②「なんとかなるかな」と誤解するから

税理士さんも、世の多くの社長さんと同じ過ちを犯してしまうのです。すなわち、「モデル就業規則を拾って来てちょっと修正すれば、なんとかなるかな〜・・・」
 

結果、「あ、いいですよ(^O^)」と安請け合いしてしまう税理士さんが後を絶たない、こととなってしまいます。
 

一人の人間の知識には限りがあります。どんな博学な人も「何でもかんでも知っている」わけではないのです。そんなこと、言われれば当たり前ですが、人はついつい自分の都合の良いように解釈してしまうもの、「税理士先生は何でも知っている」と思い込んでしまいますよね。
 

とてもとても危険ですよ。繰り返しになりますが大事なことなので再度申しあげます。

税理士さんでも、何でもかんでも知っているわけではありません。労働法については無知であると考えるべきでしょう。

餅は餅屋ではないですが、仕事はその道のプロに任せましょう
 

☆☆☆彡
 

なお、以上の話は、あくまでも一般論であって、一部の本当に顧客想いの素敵な税理士さんにはあてはまらないことを付言しておきます。
 

素敵な税理士さんは、「適当に作っちゃえばいいかな」などとは考えずに、「社労士さんを紹介してあげよう」とか、「提携している社労士さんにお願いしよう」と考えるからです。
 

私の知っている本当に素敵な税理士さんは、「お客さまにご迷惑をかけなくない」との一心で、激務の中、一生懸命勉強して社労士の資格を取ってしまいました。
 

そんな税理士さんばかりならいいですね。

就業規則作成・変更の注意点はこちら

【2012/10/15】

なぜ就業規則を作るのか?それは、労働基準法で決まっているからでしたね。

でも、それだとどうにもつまらない・・・。だって、国から強制されたから仕方なく作るということですからね。

もっと前向きな理由はないのでしょうか?すなわち、「就業規則を作るとこんなにいいことがあります」という要素はないのでしょうか?

・・・・・・・ご安心ください、ちゃんとあります。最初に社員側のメリット、次の会社側のメリットを挙げます(もちろん、会社側のメリットの方がメインだからです。真打ちは後ということです)。

<社員側のメリット>

○安心して働ける

就業規則は、その職場における法律です。言い換えれば、「その職場におけるルール」ということです(労働条件や服務規律など)。

ルールが明確になっていない社会を想像してみてください。たとえば、わが国に法律がまったくなかったら・・・。

言うまでもなく、犯罪が多発し、すぐに社会は崩壊してしまいます。

会社も同じです。就業規則というルールがなければ、労働者は「やって良いこと」と「いけないこと」の境目が見極められず、働きにくいことおびただしいですね。

逆に、就業規則がきちんと整備されていれば、迷うことなく安心して日々の業務を遂行することができます。

<会社側のメリット>

1.社員が安心して働いてくれる

社員のメリットは会社のメリットでもあります。職場に秩序が保たれます。

2.会社が儲かる

就業規則に会社の理念を明記しておけば、会社と社員が同じ方向を向いてがんばることができます。一人では弱くても、皆で力を併せれば大きなパワーを生み出すことができ、業績のアップにつながるでしょう。

3.いざというときに、会社を守る盾となる

これが一番大切です。現代は、労使トラブルが多発している時代です。労使トラブルの恐さは、ある日突然起きること。昨日までは従順だった社員が、豹変してあなたに牙を向きます。

その際に、就業規則が、あなたとあなたの会社を守る強力な盾となります。「あなたの行為は、就業規則の第○条に反していますから、会社はあなたの主張を受け入れることはできません」と、文書という明確な証拠を提示して戦うことができるのです。

就業規則がなかったばっかりに裁判で敗訴した会社がたくさんあります

もしもあなたの会社に就業規則がないとしたら・・・。

考えただけでも背筋がぞっとしますね。

早急に整備しましょう。

いざというときに、就業規則があなたとあなたの会社を救います。

そう、就業規則の作成は義務ではありません。社長のあなたの権利なのです。
 

就業規則作成・変更の注意点はこちら

【2012/10/07】

前回、法律と就業規則の「法的強弱」についてお話ししました。

すなわち、就業規則に記す労働条件は、法律の基準を下回ることはできません。たとえば、労働時間であれば、労働基準法で定める1日当たりの上限が8時間ですから、自社でそれより長い9時間とか10時間の時間を設定することはできません。

法律の基準と同じ(8時間)か、それを上回る(7時間とか6時間)ことは一向にかまいません。
 

今日は、法律と就業規則に労働協約と労働契約を加えて、法的強弱について突っ込んでお話します。

○労働協約

使用者(会社)と労働組合との書面による協定です。

○労働契約

使用者(会社)と労働者との間の契約です。書面は不要です。したがって、会社が「あなたを雇いましょう」と言い、本人が「ありがとうございます、がんばって働きます」と答えた時点で成立します。

 

法的強弱は、次のようになります。

法律≧労働協約≧就業規則≧労働契約

 

1.法律が最も強い理由

これは当たり前ですね。労働協約、就業規則、労働契約いずれも法律違反を犯すことはできません。

2.就業規則よりも労働協約が強い理由

「就業規則に記す労働条件の基準は、労働協約のそれを下回ることはできない」という意味です。

就業規則は、法に反しない範囲で会社が勝手に作成するものです。たとえば、「法律と同水準の基準」でも構いませんが、法律はあくまでも最低保障ですから、それでは労働者は不満です。そこで、労働組合を作って会社と団体交渉を行います。より良い労働条件を獲得し、それを労働協約に記すのですから、労働協約の方が就業規則よりも上位に位置するのは当然ですね。

3.労働契約が最下位である理由

労働契約を最も軽視するのではなく、逆に最も保護する趣旨です。例を挙げましょう。

A社の所定労働時間は、1日当たり7時間です。法定労働時間より短いので、当然合法です。

このA社がBさんを雇用しました。A社の人事担当者がBさんに告げました。「うちの会社の所定労働時間は1日7時間だけど、あなたは特別に8時間働いてもらうからね」

就業規則:7時間

労働契約:8時間

この場合、就業規則の方が優先されますから、人事担当者が何と言おうと、Bさんは1日7時間だけ働けば良いことになるのです。

【2012/09/28】

就業規則は職場の法律です。でも一方で、労働基準法などの本物の法律(以下、単に「法律」といいます。)がありますね。就業規則と法律の関係はどうなっているのでしょうか。
 

就業規則に記述する労働条件の基準は、会社が任意に決めてさしつかえありません。

でも、当たり前のことですが、法律違反はできません。その意味において、法律と就業規則とでは法律の方が優先する、ということですね。
 

逆に、法律の基準より良い、すなわち労働者にとって有利な水準にすることは一向に構いません。「労働者保護」が法の趣旨なのですから、当然のことですね。

これを数式で書くと、次のようになります。

法律≧就業規則

これを「法的強弱」というので、覚えておいてください。
 

例を挙げて説明しましょう。労働時間について

長時間労働を抑制する趣旨で、労働基準法は、「労働時間の上限」を定めています。

労働基準法という法律が定めているので、これを「法定労働時間」といい、原則として「1日当たり8時間、1週当たり40時間」です。
 

会社が就業規則で自社の労働時間(所定労働時間といいます)を定めるときは、法定労働時間よりも長い時間を設定することは認められません。「所定労働時間は、1日当たり9時間とする」は、明確に法律違反なのでダメなのです(実際には、残業などで8時間以上働いている人がいますが、それは例外です。今日はあくまでも原則論だけでお話しをしています。例外の話は、また日を改めて)。
 

逆に、法定労働時間より短い時間を設定することは構いません。7時間とか6時間とか。

○「所定労働時間は、1日当たり7時間とする」

○「所定労働時間は、1日当たり6時間とする」
 

法的強弱は、法律就業規則だけではなくて、本来は労働組合と結ぶ労働協約や個々の労働者と結ぶ労働契約も加味して考えなければなりません。そのお話はまた次回。

【2012/9/28】

今日は少しだけ脱線します、申し訳ありませんが、ご了承ください。
 

労働法の基本は「労働者擁護」です。その趣旨は、「使用者(会社)と労働者は労働契約を結んでいる。契約は本来対等でなければならないけど、現実には会社の方が立場が強いので、労働者はしいたげられがち。それじゃ労働者がかわいそうなので、いろいろ保護してあげようね」というものです。
 

昔はそれで良かったと思います。でも今は・・・、

良くも悪くも、若い人を中心に「権利意識」が肥大しています。また、インターネットの普及により、誰でも簡単に情報を入手できるようになりました。
 

そう、労働者が「強く」なったのです。
 

労使トラブルがひきもきらない現実が、それを証明しています。

「かわいそう」だった労働者は、もはや「かわいそう」ではなくなった。
 

では、今一番「かわいそう」なのは誰でしょうか?

それは、中小企業の社長さんです。

経営努力も経営責任も、すべて一人で背負わなければならない。

人間性に多大な問題がある労働者がいても、法律に遮られてクビにすらできない。

万が一会社がつぶれても、セーフティネット一つない。
 

再度言います。昔は「労働者擁護」で良かったでしょう。

でも、時代は変わったのです。それならば、法律も時代に合わせて見直すべきです。なぜ、いつまでもいつまでも、「会社は鬼、労働者はかよわき存在」なのでしょうか。
 

一番かわいそうなのは社長さんです。だから私は社長さんの味方をするのです。
 

もっと言えば、残業代という制度はおかしい。定時というものが決まっているのですから、仕事は定時内で終わらせるべきです。仕事がのろくて時間内に終わらせることができない人は、無償で残業して終わらせばいい。
 

もちろん、仕事量が多過ぎる場合などは別途考えなければならないでしょうが、基本的にその考え方でいいと思います。だって、仕事を効率よくきちんとこなして定時に帰る人が一番損をするなんて、どう考えてもおかしいじゃないですか。
 

私は法律の専門家ですが、それは私が「100%現行の法律を指示する」ことを意味しません。

思うところを書いてみました。人によっていろいろ意見もあるでしょう。ご批判は受け止めますよ。

【2012/9/21】

○前回のお話

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない

 

○今日のお話

作成時(変更時も同じ)には、就業規則に「労働者の代表者の意見書」を添付しなければなりません。「労働者の代表者」の定義は以下です。

「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数代表者」

分析すると、

①過半数組織の労働組合がある場合⇒その労働組合が代表者

②労働組合がない場合、又は弱小労働組合しかない場合⇒労働者全体の中から選ばれた(過半数得票)者が代表者

ということです。

 

この代表者の意見書を添付するのですが、ポイントは「意見書」であって「同意書」ではないことです。したがって、たとえば、代表者が意見書に「全面反対」と書いたとしても、それはそれで法的には「意見書」として通るのです(法律に違反する規程がある場合は話が別ですよ。その点は次回ご説明します)。

 

会社が、「全面反対」と書かれた意見書を添付して就業規則を持参すれば、労働基準監督署としては受理せざるを得ません。

 

この趣旨は、「労働者の同意を要件とすれば、労働者が同意しなかった場合、いつまでも就業規則が成立しないことになってしまう。労働者保護の観点から、とりあえず早く就業規則を成立させる方が望ましいから」とのことです。
 

就業規則作成・変更の注意点はこちら

【2012/9/16】

就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が、作成・届出する義務を負います。注意点は以下です。

① 「常時10人以上」は、会社単位ではなく、事業場単位です。

A社は、東京に本社、北海道に支社があり、それぞれ常時10人以上の労働者がいます。その場合は、東京本社と北海道支社は、おのおの就業規則を作成して、それぞれを管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません(東京本社と北海道支社の労働条件等がまったく同一であれば、同内容の就業規則でかまいません)。

② 常時10人以上の労働者は、常用雇用のパート・アルバイトも含みます。

パート・アルバイトも労働基準法の労働者ですから、「常時10人以上の労働者」に含めます。

例)

○ 正社員7人+臨時雇用のパート3人⇒常時10人以上に該当せず。

○ 正社員7人+常用雇用のパート3人⇒常時10人以上に該当する。

③ 届出は、所轄労働基準監督署長に行います。

④ 届出の際、労働者の代表者の同意書を添付する必要があります(この点は、次回詳しくご説明します)。

⑤ 常時10人未満の事業場でも、作成した方が良いです。

 常時10人未満の事業場は作成義務はないですが、次の理由により、作成することが望ましいです。

○ 就業規則は、いざというときに会社を守る盾だから。

○ 就業規則があれば、働き方のルールが明確になるから。

○ 労働条件などが明確になるから。

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